今回は個人で現物不動産投資をするケースを考えてみます。
現物不動産投資の特徴の一つとして、購入、運用、売却(ないケースもあります)という一連の作業を自ら行う必要があるため、投資と経営の両方の要素が必要であることがあげられます。
物件タイプは住宅(一棟)が主で、新築、中古、木造、鉄筋コンクリート造、区分所有等の選択肢がありますが、商業施設、ホテル等への投資の可能性は、運営に専門性が求められ、小さいといえるでしょう。

個人の現物不動産投資で住宅用途が多い理由は、他の投資対象と比較してキャッシュフローの変動幅が小さいことが考えられます。しかしリターンにおけるアップサイドが小さく、建物も築後20年を超えると、各部屋のエアコン・給湯器交換やリノベーション等が求められ、得られるキャッシュフローはさらに小さくなるのが通常です。
現物不動産投資は、まず不動産を取得することが簡単ではありません。仲介業者からの物件情報を入手し、資料と現地確認、案件選定、評価、銀行融資、賃料見通し、将来的なリノベーション、リフォーム等について検討を行います。賃貸借契約書等を読み込むのも手間がかかります。しかし、手間を惜しんで手を抜くと、取り返しがつかないことも起こりえます。
しかし現物不動産投資には大きな利点もあります。それは銀行等からの借入れを利用すれば、少額の自己資本で大きな投資を行うことが出来ることです。例えば3,000万円の自己資本で10,000万円の物件を購入出来る等、少ない自己資本でレバレッジを効かせ早いスピードで資産拡大が出来る可能性があります。また、減価償却による節税効果や相続税財産の評価減も利点です。
この場合のリスクは、銀行融資等を利用し物件を取得するため、空室や金利上昇に伴って負のレバレッジ効果が発生したりすること、想定外の工事や、賃料収入の減少等で、資金繰りが厳しくなる可能性があること、また分散効果も少なく、長期的な立地条件の変化や、賃借人による事故(自殺・事件・火災等)等の不動産固有のリスクが直接影響するため、ハイリスク・ハイリターンともなりえること等があげられます。
なお、不動産に係る有価証券投資は、株式等の値上がり益を期待した投資が一般的です。
J-REIT(ジェイ・リート)以外の伝統的なものでは、不動産業種の上場会社の株式購入がありますが、不動産会社は収益物件を保有するのみでなく様々な事業展開を行い、さらに得られた利益から法人税・住民税が課税され、内部留保分を控除し配当がなされるため、不動産からの利益を得るという観点からはやや異なる結果となるかもしれません。
不動産投資と如何に向き合うかは、投資家の状況やその目的等によって異なるものといえそうです。
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