ビルや商業施設などに飲食店や衣類・雑貨店などの店舗が入っているのをよく見かけますね。これらの店舗(事業者)は「テナント」と呼ばれ、そのスペースについて賃借し、営業しています。
ビルの所有者または運営者がテナント誘致を行う際には、通常その不動産の価値を最大限に引き上げられるように入念に市場や人口、ユーザーの属性などの調査を行い、テナント誘致の営業活動を行います。それでは、「不動産の価値を最大限に引き上げる」とは具体的にどのようなことなのでしょうか?
不動産の価値を最大限に引き上げる~テナント誘致の視点から~
実は不動産運営にとって非常に重要なのがテナントを決めることです。テナントを誘致する業務のことをリーシングといいます。リーシング業務は不動産投資の期中管理(購入と売却の間の業務)で最も大切なものの一つで、優良テナントを入居させたり既存のテナントの満足度を向上させたりすることなどによって、安定した賃料収入を確保し物件の稼働率を高く保つとともに、賃料の増加を図ることが求められます。
それでは、オフィスビルのオーナーになった場合、どのようなテナントにスペースを貸せばよいのでしょうか?パッと思いつくのは
- 高い家賃を支払ってくれる
- 人気があったりして業績が安定している
- 安心できる
といったところだと思います。確かに高い家賃を払ってくれるのはとても嬉しいことです。しかしそれだけで決めてしまってもよいのでしょうか?
そこで、リーシング担当者がオフィスビルでのテナント決定に際してよく気にする点をご紹介いたします。
リーシング担当者が気にするポイント:オフィスビルで他のテナントに与える影響例
特にオフィスビルの場合、リーシング担当者はテナント同士がお互いに与える影響を様々な視点から考察します。
匂いが強い飲食店や美容院
オフィス部分の他のテナントからクレームが来たり、他のオフィス部分のテナント誘致にマイナスに働いたりする可能性があります。
行列のできる飲食店
ビルが目立つという長所があります。一方で、同じビルに静かに業務を執り行いたいテナントがいる場合にはクレームを受けたり、誘致の際にマイナスと評価されたりする可能性があります。
コンビニやカフェ
一般的に他のテナントは喜ぶことが多いです。雨に濡れずに買い物に行ったり、簡単な商談にカフェを使ったりすることができるからと思われます。
同業種の入居
テナント同士のクレームが発生するようなことがあり、退去につながる場合もあります。同業種は競合関係ですので、情報を流出させないように行動しなくてはいけないといった実務的なマイナスの他、ライバル視している会社の従業員同士が仲良くなれないというソフト面でのマイナスもあります。
それでは、このような問題を発生させないために、リーシング業務の中で何に注意すればよいのでしょうか?
リーシング業務の注意点
まずは、申し込みをしてきたテナントだけでなく、そのテナント候補を入れることについて他のテナントはどのように感じるのか、他人の気持ちになって考えることが大切です。
また、テナントの申し込みがあってから急に考え出すのではなく、常日頃から、複数テナントの入っているオフィスや商業施設に足を延ばし、どのような考え方でテナント誘致をしたのかといったことや、自分だったらどうするのかをシミュレーションしてみると、ワンランク上のリーシングが実践できるようになります。
このように、不動産のリーシングは華やかに思われることが多く、実際ワクワクすることも多い業務ですが、実は地道な努力の結晶であるといえます。ぜひ、「自分だったらどのようなテナントを入れるかな?」と考えを膨らませながら街歩きをしてみてください。
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