建築基準法解説 その2:集団規定(1)

建築基準法について、数回にわたって解説している今回の連載。第1回では、個々の建築物が満たすべき基準を定めた「単体規定」について説明しました(第1回はこちら)。
第2回では、建築物と市街地との関係について定めた「集団規定」について解説します。

 

集団規定とは

集団規定は、建築物と都市環境との関係性を整えるために定められた基準であり、原則として、都市計画区域および準都市計画区域内において適用されます。ただし、それ以外の区域であっても、都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域内においては、地方公共団体は、条例で一定の事項(道路に関する制限、建ぺい率、容積率、建築物の高さ、斜線制限、日影規制等)について必要な制限を定めることができます。
集団規定では主に(1)道路に関する制限(2)用途制限(3)建ぺい率(4)容積率(5)高さ制限(6)低層住居専用地域内の制限(7)防火・準防火地域内の制限(8)敷地面積の最低限度について定めています。
今回は、(1)~(4)について以下概要をみていきましょう。

 

(1)道路に関する制限

<道路の定義>

建築基準法上の「道路」とは、幅員4m(地域によっては6m)以上の、道路法による道路等のことをいいます。ここで幅員を定めるのは、一定の広さが確保されていれば例えば消防活動等もスムーズに行うことできるからです。
また、建築基準法の集団規定が適用された時点で既に存在し、現に建築物が建ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものについても、建築基準法上の道路とみなされます(これを2項道路といいます)。
2項道路の場合、道路の中心線から2m下がった線が道路の境界線とみなされ、道路の反対側が川やがけ地等のときは、川・がけ地等の線から4m下がった線が道路の境界線とみなされます。

 

<接道義務>

建築物の敷地は、原則として建築基準法上の道路に2m以上接していなければなりません。ただし、敷地の周囲に広い空き地がある場合等で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについてはこの限りではないとされています。
地方公共団体は、学校・病院・百貨店等の特殊建築物や3階以上の建築物、延べ面積が1,000㎡を超える建築物等について、条例で、必要な接道義務の制限を付加することができます。

 

<道路内の建築制限>

道路内には、原則として建築物や敷地を造成するための擁壁を建築することはできません。ただし、以下の建築物等については道路内に擁壁を建築することができるとされています。

  • ①地盤面下に設ける建築物(地下商店街等)
  • ②公衆便所、巡査派出所等公益上必要な建築物で、特定行政庁が通行上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
  • ③公共用歩廊(アーケード街)等で特定行政庁があらかじめ建築審査会の同意を得て、
    安全上、防火上、衛生上他の建築物の利便を妨げ、その他周囲の環境を害するおそれがないと認めて許可したもの

 

<壁面線>

特定行政庁は、必要があると認める場合においては、建築審査会の同意を得て、壁面線を指定することができます。壁面線とは建物の並びをそろえるための線をいい、壁面線が指定されたときは、建築物の壁や柱等は壁面線を越えて建築することはできなくなります。

 

(2)用途制限

市街化区域(すでに市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域)には、必ず用途地域が定められます。用途地域は住居系・商業系・工業系を合わせて12種類に分けられます。
建築基準法では、それぞれの用途地域について建築できる建築物の制限を設けています。建築物の敷地が二つ以上の用途地域にまたがる場合は、敷地面積の過半が属する地域の用途制限が適用されます。
なお、規制に適合しない用途の建築物であっても、特定行政庁が許可した場合は建築することができます。

 

(3)建ぺい率

建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことをいいます。建ぺい率については、こちらで詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

(4)容積率

容積率とは、敷地面積に対する建築物の延べ面積の割合のことをいいます。容積率については、こちらで詳しく解説していますので、ご参照ください。

 

今回は、主に建築基準法の「集団規定」の道路に関する制限・用途制限・建ぺい率・容積率について解説をしました。次回は、集団規定の後半部分についてみていきます。

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建築基準法解説 その1:単体規定

建築基準法とは、国民の生命、健康および財産の保護を図るため、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低限の基準を定めた法律です。主な内容として、単体規定・集団規定・建築確認・建築協定について定められています。
不動産投資の場面では、検討する物件が建築基準法をクリアしていることがリスク回避の重要なポイントとなりますので、今回から数回にわたって建築基準法について解説していきたいと思います。
第1回は、建築基準法の「単体規定」についてです。

 

単体規定とは

そもそも、「単体規定」・「集団規定」という区分は建築基準法独自のものですが、集団規定が建築物と市街地との関わり等都市計画と密接な関係を持っているのに対し、単体規定は個々の建築物が満たすべき基準であり、全国の建築物全てに対して適用されます。
単体規定では主に(1)敷地、(2)構造、(3)防火・避難、(4)衛生、(5)条例による制限の附加・緩和について定めていますので、以下概要をみていきましょう。

 

(1)敷地

建築物の敷地は、これに接する道の境界線よりも高くなければならず、また地盤面はこれに接する周囲の土地より高くなければなりません。ただし、敷地内の排水に支障がない場合や、建築物の用途により防湿の必要がない場合においては、低くてもよいとされています。
建築物の敷地には、雨水および汚水を排出し、または処理するための適当な下水管等の施設を設けなければなりません。

 

(2)構造

建築物は、さまざまな重さ、圧力、地震等の振動、衝撃に耐えられる安全な構造にしなければなりません。また、床・屋根・階段を除いた主要構造部(=壁・柱・梁)に木材やプラスチック等の燃えやすい素材を用いた建築物で、「高さが13m超または軒の高さが9m超の建築物」または「延べ面積が3,000㎡超の建築物」については、①耐火構造であること、または②火災についての性能に関する一定の技術的基準を満たしていること、のいずれかの基準に適合している必要があります。

 

(3)防火・避難

<大規模の木造建築物等の外壁等>

延べ面積(同一敷地内に2つ以上の木造建築物等がある場合はその延べ面積の合計)が1,000㎡超の木造建築物等は、外壁および軒裏で延焼の恐れがある部分を防火構造としなければなりません。また、屋根の構造を、火災に関する性能について一定の技術的基準に適合するもので、国土交通大臣の認定を受けたもの等にしなければなりません。

<防火壁>

延べ面積が1,000㎡超の建築物(耐火建築物または準耐火建築物等を除く)は、防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画し、各床面積の合計をそれぞれ1,000㎡以下にしなければなりません。

<建築設備>

  • 避雷設備  :高さ20mを超える建築物には、原則として、有効に避雷設備を設けなければなりません。ただし、周囲の状況によって安全上支障がない場合においては、避雷設備を設けなくてもよいとされています。
  • 非常用昇降機:高さ31mを超える建築物には、原則として、非常用の昇降機(エレベーター)を設けなければなりません。

 

(4)衛生

<居室の採光および換気>

  • 採光:住宅の居室、学校の教室、病院の病室等には、原則として採光のための一定面積(注1)の窓その他の開口部を設けなければなりません。
  • 換気:居室には、原則として換気のための一定面積(注2)の窓その他の開口部を設けなければなりません。
    (注1)住宅の場合  :居室の床面積×1/7以上
    住宅以外の場合:居室の床面積×政令で定める一定割合(1/5~1/10)以上
    (注2)居室の床面積×1/20以上

<石綿等の飛散・発散に対する衛生上の措置>

建築物は、石綿(アスベスト)その他の物質の建築材料からの飛散・発散による衛生上の支障がないよう、以下の基準に適合するものでなければなりません。

  • 建築材料に石綿等を添加しないこと
  • 石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散または発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものまたは国土交通大臣の認定を受けたものを除く)を使用しないこと
  • 居室のある建築物では、上記1、2のほか、石綿等以外の物質で居室内において衛生上の支障を生ずるおそれのあるものとして政令で定める物質(クロルピリホス、ホルムアルデヒド)の区分に応じて、建築材料および換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること

<地階における住宅等の居室>

住宅の居室、学校の教室、病院の病室等で、地階に設けるものは、壁および床の防湿の措置その他の事項において衛生上必要な政令で定める技術的基準に適合するものでなければなりません。

<便所>

下水道法に規定する処理区域内においては、便所は、水洗便所以外の便所としてはなりません。

 

(5)条例による制限の附加・緩和

<災害危険区域>

地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができます。また、災害危険区域内における住宅用建築物の建築の禁止その他建築物の建築に関する制限で災害防止上必要なものは、条例で定めます。

<地方公共団体の条例による制限の附加>

地方公共団体は、その地方の気候や風土の特殊性等により、建築基準法の規定のみによっては建築物の安全、防火または衛生の目的を十分に達しがたいと認める場合においては、条例で、建築物の敷地、構造または建築設備に関して安全上、防火上または衛生上必要な制限を附加することができます。

<市町村の条例による制限の緩和>

市町村は、都市計画区域や準都市計画区域等の区域外において、土地の状況によって必要と認める場合においては、国土交通大臣の承認を得て、建築物の敷地や構造、居室の採光および換気等についての建築基準法上の制限を緩和することができます。

 

以上、今回は建築基準法の「単体規定」について解説をしました。次回は、建築基準法の集団規定についてみていきます。

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どのような借主がメザニンローンを借りるのか?

2016年9月現在、『OwnersBook』は貸付型の案件を紹介しており、案件の多くは「メザニンローン」「シニアローン」の形態で運用されています。これは、当該案件の運用は「不動産担保ローンに対する貸付によって行われる」ことを示しています。
メザニンローンの仕組みについては運用タイプの説明ページに詳細を掲載していますので、是非ご参照ください。

メザニンとは

まずメザニンとは英語で「中二階」を意味する語で、そこから転じて「中間的な」ファイナンスのことをメザニンファイナンスというようになりました。中間とはこの場合、シニアファイナンス(通常銀行融資)とエクイティ(株式)の中間のことです。メザニンそれ自体日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、投資家層が厚い米国などでは資金供給手段の一つとしてメザニンが広く認知されており、メザニンファイナンスを専門とする投資銀行やファンドなども多く存在します。

この投稿ではメザニンファイナンスの中でもメザニンローンについて掘り下げ、①どのような方がメザニンローンを借り、②メザニンローンで運用すると貸主側にはどのような魅力とリスクがあるのか、について解説致します。

メザニンローンの借主とは

どのような方がメザニンローンを借りるのでしょうか?いくつか例を挙げてみます。

1)資金効率を上げたい不動産会社

マンションなどを開発し、リースアップをして個人投資家などに売却していくプランを持っているが、売却までの期間お金を借りて、次のプロジェクトへの投資に移りたいようなケース。また、単純に次の案件への投資機会が現れた際にスピーディに動けるよう、予め手元流動性を厚くしておきたいケース。

2)不動産デベロッパー

建設中に、追加で資金が必要となったケース。

貸主側にとってのメザニンローンの魅力とリスクとは

上記で借主像をイメージしたところで、貸主側にとっての魅力とリスクを検討してみましょう。

1)魅力

メザニンローンは一般的にはシニアローンよりも高い利回りを得られる商品となっています。それは投資リスクに見合った金利水準が設定されるからであり、メザニンローンを取り入れることにより投資のリターンが改善されます。

2)リスク

メザニンローンはシニアローンより返済順位が後になる借入れです。そのためリスクはシニアローンよりも高くなります。通常借り手の返済が滞った場合には担保となる不動産を処分してローンを回収しますが、メザニンローンの債権者はシニアローンの債権者が回収しても残余金があった場合にそこから回収できるにすぎないからです。

メザニンローンはシニアローンと比べるとハイリスク・ハイリターンといえますので、貸主側にとっては担保の分析が非常に重要となります。
また、それは逆に、担保の分析をきちんと行うことができれば、より適切な、よりよい収益機会を捕えることができる、ということを意味しています。

担保の分析の重要性については「ソーシャルレンディング、貸付型クラウドファンディングにおける担保の分析の重要性」にて詳しく解説していますので、宜しければご参照ください。

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